訪問介護の正社員は17.5%
現在ホームヘルパーはじめとする介護分野の現状は、一言で言えば、人手不足です。
また、正規職員として採用されている割合が少なく、非正規の職員の数が多いのも課題となっています。
厚生労働省が発表した資料によると、2013年に施設で働く介護職員のうち、正規職員は56.5%。
パートなどの非正規職員は41.4でした。
訪問介護事業所ではこの割合はさらに高くなり、正規職員はわずか17.5%、非正規職員が78.4%と、大半を占めています。
介護施設で働く常勤介護職の平均月給が2018年9月時点で30万970円と、前年に比べ1万850円増加したと厚生労働省より発表されました。
平均月給が30万円を超えたのは調査開始してから初めてのことです。
これは介護の現場で深刻化する人材不足と、待遇の改善で仕事を続けられるようにとする施設が増えたことだと考えられます。
厚労省は介護職員の諸郡を改善するために、介護報酬を支払っていることもあり給与水準を押し上げたのでしょう。
2035年には79万人の人材が不足する
2018年、経産省より2035年には79万人の介護人材が不足すると発表されました。
2015年では介護関連の従事者数は183万人で不足は4万人だったことを比べると、人材の不足数は20倍にも上ります。
人材確保のための取り組み
一方で、求人数は年々増加しており、ほかの産業に比べて介護分野の求人はずば抜けて高くなっています。
2016年時点で、日本で働く介護人材は約183万3千人と推計されています。
今後は介護職の人材需要はさらに高まり、2025年度には最低でも237万人の介護職員が必要と考えられています。
一般的に介護職に関するイメージは低く、やりがいなどのプラス面よりも、夜勤がある、労働環境がハード、給料が低いなどといったネガティブなイメージがあります。
このため、介護職を望む若手人材が増えないという課題もあります。
しかし、超高齢化社会で高齢者の割合が高い日本では、今後も介護人材の確保は必要です。
しかも人員確保だけでなく、質の高いサービスが提供できる優秀な人材が求められています。
政府は介護人材を確保するための支援事業や、学校に通うために必要な資金の貸与、資格取得のための職業訓練の実施などさまざまな試みを行って人材を確保すると同時に、キャリアアップ支援などを通じて質の向上にも務めているところです。
また、離職率を低くするために、収入アップ、職場架橋の改善などにも取り組んでいます。
このため、今はマイナスイメージを持つ人がいても、今後は介護職に対するイメージは改善されていき、働きやすい職場へと変わっていくことが期待されています。
このような政府の取り組みに伴って、各都道府県でも独自の活動を行うところが増えてきました。
例えば静岡県では介護職員の給与水準を上げるためのモデルプランを作成し、推奨しています。
また、埼玉県では離職率の低い事業所や、従業員の資格取得を応援している事業所を表彰するなどの事業を行っています。
このほかにも政府は、良質な介護サービスが提供できる人材を確保するための資格支援対策も行っています。
介護職員のキャリアパス制度として、ホームヘルパーを初任者研修修了者に変更し、初任者研修修了者は次に介護福祉士の国家資格の取得を目指し、さらに認定介護福祉士の取得へと至るキャリアプランを基本プランと定めました。
資格取得が簡単なホームヘルパーからスタートして、働きながらステップアップできる仕組みづくりが進められているのです。
現状はホームヘルパーが優遇されていない面もありますが、今後はさまざまな課題が改善されていくと期待されます。
なぜなら、介護職員が働きやすい環境を整えることが、増え続ける高齢者に対し、良質な介護を提供する最良の方法だからです。