業界コラム

海外の高齢者事情

ヒゲのおじいさん

世界トップクラスの超高齢化社会となった日本

医療技術が目ざましく進んだ結果、高齢化が進み、元気で活躍するシルバー世代が増えています。
それと同時に老化や病気、ケガなどが原因で寝たきりとなり、介護を受けざるをえない高齢者も増え続けており、高齢者介護が大きな社会問題となっています。

今や高齢化は世界的な課題ですが、戦後まもない頃の日本では欧米に比べて高齢者の人口が少なかったため、介護に関する知識を欧米から学ぶことが多くありました。

しかしその後、日本でも高齢者の人口は急増し、世界でもトップクラスの超高齢化社会となりました。
このため欧米諸国をモデルにするという姿勢から、日本が独自に介護システムを構築し、オリジナルの介護サービスを提供するという形にシフトしています。

しかし国際間の交流で、それぞれの国の現状を学び合うのは大切なことです。
外国の介護事情と日本の介護事情を比べることで、改めて介護が抱える課題が浮き彫りになることが多いからです。

欧米諸国では寝たきり老人がいない?!

さて、海外では寝たきり老人がほとんどいないと聞きます。
先進的な福祉を行っていることで知られるデンマークやスウェーデンはもちろんのこと、イギリス、アメリカ、オーストラリアなど、欧米諸国のお年寄りには寝たきりの人はほとんどいません。

なぜでしょうか?
これは、日本と欧米の倫理観の違いが大きな原因です。

人は年を取ってくると機能が衰えて、口からものを食べることができなくなります。
そこで日本ではお腹に穴を開けて、チューブで胃の中に直接栄養を送り込むといった方法をとって、高齢者の命を守っています。
しかし、胃にチューブを差し込むのですから、高齢者の多くが無意識に手でそれを外してしまうことがあります。
このため、寝たきりの人がチューブを外してしまわないように、両手をベッドに縛られているのです。

一方、欧米諸国では口からものを食べられなくなった場合、日本のような処置は行わず、せいぜい薬を飲ませる程度にとどまっています。
なぜなら、食べられなくなった人の体に穴をあけて栄養を送り込んでまで延命措置を行うのは、倫理に反すると考えられているからです。
それどころか、老人虐待と受けとられることもあります。
そこで、食べられなくなった高齢者は自然死を迎えるため、寝たきりの高齢者がいないというわけなのです。

日本では生き長らえることができるなら、あらゆる延命措置を行って、命を大切にするべきだという考え方が主流です。
どちらの考え方が優れているというわけではありませんが、命に対する考え方によって、介護の内容も変わっていくことが、海外の介護事情とわが国の介護を比べるとわかってきます。

しかし、人間の尊厳という観点から高齢者介護の在り方を見つめ直すとき、どこまで延命治療を行うのかという判断は、本人の意志にゆだねられるべきだという考えもあります。
このため、まだ元気なうちから延命措置は拒否すると書面に記しておく人も増えているのです。

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