認知症の人に対する接し方次第で、症状が進むことも
高齢者の介護は大変ですが、そのなかでも特に神経を使うのが、認知症の人への接し方です。
認知症に対する理解を深めて適切に接すれば、認知症の進行を遅らせる効果も期待できるので、認知症の人とのふれあい方は非常に重用です。
特に初期のころは家族や近くにいる人が、認知症に気づいて適切なサポートをすることが大切です。
認知症の初期は、本人自身が以前より物事がうまくできなくなったと感じています。
しかし、年を取ったのだから仕方がない、こんなこともできないのかと思われるのは恥ずかしい、家族に迷惑を掛けたくないなどの理由で、そのことから目を背けたり、家族に隠してしまう場合が多いのです。
しかし、本人は認知症かもしれないという不安が強いですから、日常生活で失敗が増えて家族に怒られることが多くなると、不安と恐怖を感じて気持ちが不安定になってしまいます。
これらのストレスが怒りやすくなる、夜中に歩きまわる、妄想が出るなどといった症状の悪化を促すのです。
認知症の人は非常に不安であること、ストレスのかかる環境が普通の人以上に苦手であることをよく理解して、なるべくストレスのない環境をつくるよう心がけることが大切です。
失敗を怒ると、事態は悪化します
認知症になると、脳が情報を処理する能力が衰えますから、何事もうまくいかないことが多くなり、一つ一つの動作がとてもゆっくりなります。
しかし、これは病気なのですから、仕方のないことです。
相手のペースに合わせるようにして、もっと早くと急(せ)かせたり、イライラしたりしないよう心がけましょう。
また、認知症が進むとすぐに物事を忘れてしまいますが、そのときに感じた気持ちは心のなかに長く残ります。
つまり自分にとって都合の悪い失敗はすぐに忘れて、その代わりに怒られた、怒鳴られて怖かったという感情だけが残るのです。
そうなると、たとえ親子であってもあの人はすぐに怒る怖い人だというマイナスの感情が残るので信頼関係を築けなくなってしまい、事態はさらに悪化するという悪循環に陥ります。
ついイライラすることも多いのですが、一方的に相手を怒鳴るなどの行為は、認知症の人にとって苦痛でしかありません。
怒鳴りつけたからといって、今の状況が改善するわけではありません。
このことをよく理解して、相手の気持ちを十分に考えてあげましょう。
認知症は、その行動事態の記憶がなくなるのが主な症状です。
たとえ怒られても、記憶にないことなので自分がした覚えのないことについて、不当に文句を言われているという気持ちになります。
しかし、認知症がものを忘れる病気だからといって、無感情になるわけではありません。
認知症の人にも感情がありますし、人としての自尊心があります。
自尊心を傷つけないように、優しく接してあげてください。
なるべく笑顔で接してあげると、たとえ言葉によるコミュニケーションが難しくなっても、安心感を与えることができます。
認知症になると物忘れがひどくなりますし、日常生活で失敗することも増えてきます。
しかし、失敗させないようにしようとするのは逆効果です。
正しいことをさせる、失敗しないようにさせる努力よりも、どうしたらスムーズに日常生活を暮らせるかを考えて、お互いに円満な関係を築くよう努力することが現状を改善する一番の近道です。
認知症の人は、昔とは違う人間になってしまったという強い不安を感じています。
このため、自分を理解してくれる人を求めています。
この人に頼れば安心だ、この人がいるから認知症でも大丈夫と思ってもらえればストレスが軽減しますから、認知症の進行を遅らせ、さまざまな症状が軽くなることが期待できるのです。